雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

4月28日 その人がたとえ幽霊でもいいからもう一度会いたい。

2022.04.28

 NHKドラマ『正直不動産』の第4回は事故物件がテーマだった。
 事故物件は、過去に居住者が不自然な死に方をしたために不動産業者があっせんしにくい物件のことをいう。
 ところが、山下智久が扮する主人公の長瀬財地のところに、事故物件に住みたいという奇特な老齢の女性(風吹ジュン)がやってきてしつこく事故物件のあっせんをお願いする。聞けば、ある日死んだはずの夫が寝ている傍に現れて自分を気遣ってくれた。幽霊でもいいから夫に会いたい、だから事故物件を探しに来たのだいう。
 どこかで同じ話をきいた。
 東日本大震災の被災地で、肉親を亡くした人が、死んだ肉親が幽霊でもいいから現れてきてくれてほしい、と言っていたというのを聞いたことがある。今日から明日へ続くと思っていた日々の普通の暮らしが突然の事故でブチ切れてしまったんだから当然だ。自分も当事者になったらそう思うのだろうと思うと、コメディドラマのはずの『正直不動産』がとてもリアルで笑えずにむしろ涙がこみあげてくる。
 自分も、病気や高齢という自然な別れであったとしても、もしも許されるのであればまた死んだ家族に会ってみたい。たまに夢にはでてきてくれるけれど。
 祖母は、私の親代わりだった。農作業で働く父母に代わって農家の家事を担い、私を育ててくれていた。晩年認知症が進み体も弱くなっていった。恩返しをしたいと思いながらできなかった。もう幽霊を怖がる年齢でもない。幽霊でもいいからもう一度会いたい。

馬場秀幸  カテゴリー:その他