雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

8月15日 「戦争を知らない世代」にも責任はあるか

2020.08.15

 5年前の戦後70年談話の内容が議論された際、戦争を知らない世代に過去の責任を負わせたくない、という意見があり、それが談話にも影響を与えた。
 「戦争を知らない世代」は過去の先代がした戦争に何の関わりもなくていいのだろうか。
 教科書裁判を闘った家永三郎先生には、『戦争責任』(岩波書店 1985年)という著作がある。先生は、「純戦後世代の日本人であっても、その肉体は戦前・戦中世代の日本人の子孫として生まれたものであるにとどまらず、出生後の肉体的・精神的成長も戦前世代が形成した社会の物質的・文化的諸条件のなかでおこなわれたのであった」「戦後世代が戦前世代の遺産を相続することなしに自己形成をなしえなかったのであるとすれば、戦前世代の遺した責任も当然に相続しなければならないのである」(同308~309頁)と述べている。
 戦後世代と言っても過去からの連続で今を生きている。また、他国の人も、私達を過去から未来に続く日本のなかの日本人として見ている。もちろん、直接かかわっていない以上法的な責任を負うということはありえない。しかし、先代がした過去の行為に対する評価は、問われる都度それに回答する義務はあるだろう。これは、道徳的な責任というか生き方の問題だろうと思われる。

馬場秀幸  カテゴリー:その他