雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

8月25日 郷愁

2021.08.25

 私の生家は、周りがすべて田んぼに囲まれた小さな集落の中にある。祖父母の時代、父母の時代、稲作を生業にして生きてきた。1960年代は耕地整理が行われ、それまでと比較すれば田も使いやすくなったが、それでも手作業が中心だった。田植えの頃になると、朝から苗植えの女性たちが集まって、みんな一列になって苗を植えていく。秋になれば家族総出で稲を刈り、自宅の作業所では夜遅くまで脱穀をしたり乾燥機を動かしたりとにかくにぎやかであった。子どもは手伝いに駆り出されたり、仕事をする大人の周りをうろうろしていた。そんななごやかな時代でもあった。
 次第に田植えも稲刈りも機械化されて、だんだんと人手も必要なくなった。また、農業をしなくても他の職業に就いて生計を立てることができるようになった。農業の後継者は年を追うごとに少なくなり、田んぼを手放す人も多くなっていった。最近では大規模農家が小規模の農家の田んぼを購入したり借りたりして稲作が維持されてきた。
 わが集落でも、田んぼを所有している家は我が家を含めて2、3軒になってしまった。そして、数年後にさらに農地の大規模な区画整理事業が行われることになっている。農家の後継者にはなれなかったが、田んぼを手放すことは過去の記憶を消してしまうかのような気持ちもあって手放さないできた。しかし、、そういう状況ではいられなくなりそうである。
 かつては、早くこんな田舎から出たいなあと思っていたけれど、今は昔を懐かしく思う。

馬場秀幸  カテゴリー:その他