雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

8月31日 山上容疑者のこと

2022.08.31

 殺害行為を肯定する気持ちはさらさらない。しかし、その後の報道から、山上容疑者の生い立ちには同情する。
 こんなことを書いたら不謹慎だと言われるだろうと思われるかもしれない。でも、もしかしたら大事なことだとも思うので書いておきたい。
 山上容疑者は1980(昭和55)年に生まれた。母方の祖父は建設会社を営み山上の父はその建設会社で役員を務めていた。家は裕福な家庭だった。ただ、山上には兄がいて兄は小さい頃大病を患い母は兄につきっきりだった。84年(山上4歳)に父が自殺。その後母が統一協会に入信し、多額の献金をする中で家庭が困窮していく。山上は高校卒業後大学進学すことをあきらめて自衛隊に入隊した。2005年(山上21歳)1月、山上は、「死ぬことで困窮している兄と妹に保険金が渡ればと」いう思いで自殺をしたが未遂に終わる。その後は海上自衛隊を退職し、派遣やアルバイトの職を転々とする。2015年(山上39歳)に兄が自殺。その後、山上は、統一教会への恨みをつのらせていく。これが山上の生い立ちである。
 親の資力が原因で大学に行きたくても行けなかったことも切ないが、なによりも切なく感じたのは、保険金の受取人を兄と妹にし、自分の生を犠牲にして金を遺そうとしたことである。母親が新興宗教に傾倒して家庭が破綻した。しかし、誰も救ってくれない。救おうとすればそれは自分の生と引き換えに金を遺すという選択肢しかなかったのである。
 大阪大学名誉教授の藤岡淳子さんは、山上容疑者の行動に「家父長的なにおい」がすると言った(朝日新聞8月2日)。田中優子氏も、藤岡さんの「家父長制」という言葉で山上容疑者の行動に納得したと言っていた(『週間金曜日』8月26日「命の場所」)。ぼくらもまだまだ家に縛られている。家や家族から自由になりたくてもなかなかなれない。そんな人多いのではないか?
 

馬場秀幸  カテゴリー:その他