雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

国の立場と個人の立場1

2019.01.26

韓国の元徴用工の最高裁判決について、政府は「1965年の日韓請求権協定によって完全かつ最終的に解決した」と言っている。こんな政府の意見に余り異を唱えるマスコミ報道もない。だから、みんな何となく韓国が悪いという考えになっている。私は、すごく違和感があるんですけどね。

 

そもそも「徴用工」って何だかご存知なのか?その内容が何も明らかにされないままに議論が一人歩きしている感じです。

 

学生時代、大学には学生が自分たちで企画した自主講座ってのがありました。私は、その一つの「日朝関係史ゼミ」に入り真面目に勉強していました(他の大学の講義には出なかったんですが)。

 

「徴用工」のテーマはその当時「朝鮮人強制連行」って言ってました。「強制連行」のほうが事実を直截に表していてわかりやすい。

 

日本は、日中戦争、太平洋戦争で日本の炭鉱や工場に必要な人力確保するため長期的な計画を立てて組織的に人力を動員しました。その対象は日本人のみならずその当時日本に併合していた韓国の人々もでした。その徴集の仕方は暴力的であったり詐欺的でした。今回の原告のように、2年間訓練を受ければ技術を習得できると甘い言葉に誘われた人もいます。

 

しかし、労働環境は過酷で、「生命や身体に危害を被る可能性が高い劣悪な環境で危険な労働に従事し、具体的な賃金額も分からないまま強制的に貯金をしなければならなかったし、日本政府の残酷な戦時総動員体制で外出が制限され、常時監視を受け脱出が不可能であったし、脱出を試みたのがばれた場合、残酷に殴打を受けたりも」(判決より引用)しました。働いても強制的に貯金ですから実質的な無償労働=奴隷労働ですよね。

 

こういう非道な扱いをされた方々が精神的苦痛に対する慰謝料を求めた裁判が韓国でされた徴用工裁判です。今回の新日鉄住金の裁判では、訴訟提起当時は4名いましたが、次々と死亡されて、残ったのは94歳の李春植さん一人だけ。韓国の報道では判決報道後の李さんや遺族の方々の映像がありますが、

 

日本のマスコミ報道はただただ「完全かつ最終的に解決した」の繰り返し。この事件、よくよく考えれば従軍慰安婦問題とまったく同じんですよ。どうして被害が生れたのか、被害者がどのような決意で訴訟を提起し、今どのように考えているのか。そういう一人の人間に寄り添った報道がない。ホントにおかしいと思います。

馬場秀幸  カテゴリー:その他

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です