雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

韓国文学「82年生まれ、キム・ジョン」(チョ・ナムジュ著、筑摩書房)を読む。

2019.10.12

 今日は午前中、市民プラザで弁護士会の法律相談。時間が経過するにつれ雨が強く降ってきた。終わって自宅に戻る。何もできない。台風が過ぎるのをじっと待つ。
 前に購入していた「82年生まれ、キム・ジョン」を読んだ。韓国を生きてきた普通の現代女性キム・ジョン(1982年生まれ)が生活や労働の現場での女性差別、女性嫌悪の体験により傷つき精神に変調をきたすという物語だ。フィクションでありながら、韓国の現代史が随所に盛り込まれ、現代韓国を知る手がかりにもなる。
 子どもの頃は親は男の子を女の子より大切に扱ったり。大学を出ても就職の条件は圧倒的に男性が優位だったり。結婚すれば女性が退職を余儀なくされたり。こういう韓国の事情がキム・ジョンの体験を通して淡々と綴られていく。なんだ、まったく同じじゃないか日本と。おもしろいなあと思うのは、こういう不合理な扱いをうけた時の微細な感情の動きが丁寧に表現されていることだ、
 例えば、キム・ジョンが婚姻して共同生活を始めたとき、夫は早く婚姻届けを出そうとしていた。ジョンは、夫が届けを早く出そうとしてウキウキしている姿に一瞬うれしくなったが、すぐにその気持ちは醒めてしまう。夫は、ジョンに対して婚姻届けを出すことによって「気の持ちようがかわるだろ」と言ったからだ。つまり、夫は婚姻届けを出すことにより責任感が生まれるという。他方、ジョンは、婚姻届けを出しても出さなくても心は変わらないと思うのだ。婚姻届けを作成して提出するという小さいな行いにさえ、韓国という社会に置かれた男と女ではその受け取り方に違いがあるのだということを教えてくれる。
 日本でも、結婚した後の姓の選択、結婚後の生活スタイルで、女性は事実上男性よりも厳しい選択を迫られる。日本の男は「韓国ヘイト」している場合じゃないと思うんだが。
 
 

馬場秀幸  カテゴリー:書籍・映画