雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

1月5日 T・K生「韓国からの通信」

2022.01.05

 韓国の宗教哲学者池明観(チミョンガン)さんが1日に亡くなった。
 池明観さんというよりも、「T.K生」のほうが、日本人は知っている。
 韓国では、1970年代から独裁政権が続いていた。しかし、日本人はその独裁政権の内実をほとんど知らなかった。匿名の「T.K生」が雑誌『世界』で韓国の民主化運動の現状を報告した。その連載は1973年から88年にまでの長期に及んだ。
 中学時代の英語の下鳥先生は、私にまだ知らないいろいろなことを教えてくれた。雑誌『世界』の購読を勧めたのも下鳥先生だった(と思う)。それに刺激されて高校時代『世界』を読んだ。読んでも何もわからない。でも、一つだけ必ず読む記事があり、それが「T.K生」の「韓国からの通信」だった。
 そこで描かれる話は、ホント当時のマスメデアからは伝わってこない話ばかりだった。独裁政権は必ず強いが、それに対する抵抗も激しくなっている。いつか必ず独裁政権を倒す日が来る、そんなトーンだったように記憶している。「まさかそんなこと絵空事だよなあ」みたいに思っていたが、その日がやってきたのは、歴史が証明してくれた。
 『世界』のお蔭で、韓国の現代史についてそれなりに学ぶことができたし、多角的な視点で物事をみる方法も教えてもらった気がする。「「突然始まった戒厳令下の韓国の状況については、誰も語る自由をもっていない」と始まる民主化運動の現状報告を、身が震える思いで呼んだのは私だけではあるまい」(朝日新聞2021.1.5「評伝」隅元信一論説委員)。その通りだと思う。
 
 

馬場秀幸  カテゴリー:書籍・映画