雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

3月19日 日本はいつから冷血な国になった?

2020.03.19

 赤木俊夫さん(享年54歳)。2年前の3月、佐川局長ら理財局の上司から森友学園に対する国有地売買に関わる公文書の改ざんを指示されてやむなくその指示にしたがい、それを苦にして自殺。今回、奥さんが遺書と詳細な手記を元NHK記者に託して公開した(「すべて佐川局長の指示です」週刊文春3月26日号)。
 その当時から自殺の原因はそうではないかとみんな思っていたが、それでも単なる憶測と「やっぱりそうだった」というのでは全然違う。凄いスクープだ。当時、遺書があるとは報道されていたが、どうせ財務省に隠ぺいされ真相は葬られたものと誰もがあきらめていたのではないか?奥さんの勇気ある行動に泣けてくる。奥さんがどうして遺書を公開する気になったのかは、文春を読めばよくわかる。財務省に関わるみんなが恐ろしく冷血なのだ。
 これを書いた相澤冬樹大阪日日新聞記者は、元NHK記者。森友事件のスクープを連発したが、上層部の意向で「記者を外され」退職。大阪日日新聞に転職して森友事件を追っかけていた。この経緯は『安倍官邸VSNHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』(文藝春秋 相澤冬樹著)に詳しい。この本の最後で、相澤は、「国と大阪府は、なぜそこまでして、この小学校を設立させたかったのか?」「この謎を解明しないと、森友事件は終わったことにならない。私がNHKを辞めた最大の目的は、この謎を解明することだ」(同299頁)。その言葉の通りのことを相澤記者は実現してくれた。この記者魂にも感嘆する。
 それにしても、この報道を受けての関係者の冷血な態度は、当時も現在も変わらない。安倍首相「改ざんがあってはならない」???相変わらず他人事。麻生財務大臣「再調査の必要なし」。大分前になるが、1989年、リクルート疑獄で竹下登元首相が内閣総辞職をした。その翌日、竹下の金庫番と言われた青木伊平秘書が謎の自殺を遂げた。その時のテレビに映った竹下元首相の顔はどう見ても沈痛で、自分はその時、すごい偉い政治家でも人間の情というのはあるんだなと感じた。その時と今とを比較すると、日本人全体がどうも情が薄くなってきたようだと思う。情がないどころか冷血である。いつから、どうしてこうなってしまったのか?
 「冷血」に関係するが、拉致被害者家族の蓮池透さんには『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)という本がある。拉致問題を出世の手段にしか考えていない政治家たちの実像が描かれている。持続的にしたたかに、冷血でない人たちの緩い連帯を求めたい。

馬場秀幸  カテゴリー:その他